モデル・コア・カリキュラムは、日本の大学の医学部で医師を養成する卒前医学教育に関して、各大学が策定する「カリキュラム」のうち、全大学で共通して取り組むべき「コア」の部分を抽出し、「モデル」として体系的に整理したものです。各大学における具体的な医学教育は、学修時間数の 3 分の 2 程度を目安にモデル・コア・カリキュラムを踏まえたものとし、残りの 3 分の 1 程度の内容は、大学が自主的・自律的に編成するものとされています。
一般社団法人日本医学教育学会(医学教育学会)は、文部科学省「大学における医療人養成の在り方に関する調査研究委託事業」による委託に基づき「医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」を作成いたしました。このページは医学教育学会「モデル・コア・カリキュラム改訂等に関する調査研究チーム」が、「医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」に基づいて作成しています。
モデル・コア・カリキュラムでは、医学生が卒業するまでに身に付けるべき能力を10の資質・能力(第1層)として提示し、詳細を第2層から4層までの項目と、関連づけられた別表で示しています。
人の命に深く関わり健康を守るという医師の職責を十分に自覚し、多様性・人間性を尊重し、利他的な態度で診療にあたりながら、医師としての道を究めていく。
社会から信頼を得る上で必要なことを常に考え行動する。
品格と礼儀を持って、他者を適切に理解し、思いやりを持って接する。
医師に相応しい教養を身につける。
医療における倫理の重要性を学ぶ。
患者の抱える問題を臓器横断的に捉えた上で、心理社会的背景も踏まえ、ニーズに応じて柔軟に自身の専門領域にとどまらずに診療を行い、個人と社会のウェルビーイングを実現する。
患者の抱える問題を臓器横断的だけでなく心理・社会的視点で捉え、専門領域にとどまらない姿勢で責任をもって診療に関わり、最善の意思決定や行動科学に基づく臨床実践に関与できる。
地域の実情に応じた医療・保健・福祉・介護の現状及び課題を理解し、医療の基本としてのプライマリ・ケアの実践、ヘルスケアシステムの質の向上に貢献するための能力を獲得する。
患者・生活者の成長、発達、老化、死のプロセスを踏まえ、経時的に患者・家族・生活者に起こり得る精神・社会・医学的な問題に関与できる。
文化的・社会的文脈のなかで生成される健康観や人々の言動・関係性を理解し、文化人類学・社会学(主に医療人類学・医療社会学)の視点から、それを臨床実践に活用できる。
安全で質の高い医療を実践するために絶えず省察し、他の医師・医療者と共に研鑽しながら、生涯にわたって自律的に学び続け、積極的に教育に携わっていく。
生涯学び続ける価値観を形成する。
医師・医学生に限らず、同僚や後輩を含む医療者への教育に貢献する。
医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的思考を身に付けながら、学術・研究活動に関与して医学を創造する。
知的好奇心を満たす喜びとオリジナリティの重要性を知る。
先人の偉業を知り、新たな発想を育む。
自然科学・人文社会科学の研究手法を体験し理解する。
研究の意義・内容を他者に説明し討論する。
法令遵守ならびに人権尊重し、医学生として正しく行動する。
医学及び関連する学問分野の知識を身に付け、根拠に基づいた医療を基盤に、経験も踏まえながら、患者の抱える問題を解決する。
分子レベルから個体レベルまでの、生命現象、細胞から個体の構成と機能、個体の反応を理解し、その破綻による病因と病態を理解する。
人体各器官の構造と機能を理解し、主な疾患の病因、病態生理、症候、診断と治療の知識を臨床的に使用できる。
器官横断的で全身に及ぶ生理的変化を理解し、主な疾患の病因、病態生理、症候、診断と治療の知識を臨床的に使用できる。
発展し続ける情報化社会を理解し、人工知能等の情報・科学技術を活用しながら、医学研究・医療を実践する。
医学研究・医療等の場面で、情報科学技術を取り扱う際に必要な倫理観・デジタルプロフェッショナリズム及び基本的原則を理解する。
安全かつ質の高い医学研究・医療に必要な情報・科学技術に関する基本理論を理解し、その知識を自身の学修や医療へ適応する姿勢を体得する。
遠隔医療を含む患者診療、学修の最適化に有効なICTツールの実践スキル及びデジタルコミュニケーションスキルを修得する。
患者の苦痛や不安感に配慮し、確実で信頼される診療技能を磨き、医療の質と患者安全を踏まえた診療を実践する。
患者本人、家族、医療スタッフ等関係する様々なリソースを活用し、診療に必要な情報を収集できる。
得られた全ての情報を統合し、様々な観点から分析し、必要な医療について評価した上で提供すべき医療を計画できる。
患者の状態の評価に基づいて患者本人、家族、医療スタッフと連携し、必要な医療を提案または実施できる。
実施された医療を省察し、言語化して他者に説明し、次回に向けて改善につなげることができる。
医療の質と患者安全の観点で自己の行動を省察し、組織改善と患者中心の視点を獲得する。
患者及び患者に関わる人たちと、相手の状況を考慮した上で良好な関係性を築き、患者の意思決定を支援して、安全で質の高い医療を実践する。
患者のプライバシー、苦痛等に配慮し、非言語コミュニケーションを含めた適切なコミュニケーションスキルにより良好な人間関係を築くことができる。
患者や家族の多様性に配慮し、必要な情報についてわかりやすく説明を行い、患者の主体的な治療やマネジメントに関する最善の意思決定を支援できる。
患者や家族の心理的、社会的背景を広い視野で捉える姿勢を持ち、患者の持つ困難や必要な情報提供に対応できる。
医療・保健・福祉・介護など患者・家族に関わる全ての人々の役割を理解し、お互いに良好な関係を築きながら、患者・家族・地域の課題を共有し、関わる人々と協働することができる。
患者や利用者、家族、地域の重要な課題について、協働する関係者と共通の目標を設定する過程で、背景が異なることに互いに配慮し、役割、知識、意見、価値を伝え合うことができる。
自他の役割や思考・行為・感情・価値観を踏まえ、協働する職種で信頼関係を構築し、時に生じる職種間の葛藤にも適切に対応しながら、 互いの知識・技術を活かし合い、職種としての役割を全うできる。
医療は社会の一部であるという認識を持ち、経済的な観点・地域性の視点・国際的な視野なども持ちながら、公正な医療を提供し、健康の代弁者として公衆衛生の向上に努める。
憲法で定められた「生存権」を守る社会保障制度、公衆衛生とは何か、地域保健、産業保健、健康危機管理を理解する。保健統計の意義や利用法を学ぶ。
人間集団を対象とする研究法である疫学の考え方と意義、主な研究デザインを学ぶ。医学、生物学における統計手法の基本的な考え方を理解する。
死の判定や死亡診断と死体検案を理解する。
患者の抱える健康に関する問題の背景にある社会的な課題を適切に捉え、その解決のために積極的に行動する。
国内及び国際社会の中で規定される医療の役割と医療体制について概要を理解している。
医学的・文化的・社会的文脈のなかで生成される健康観や人びとの言動・関係性を理解し、社会科学 (主に医療人類学・医療社会学)の視点・理論・方法から、それを臨床実践に活用することができる。