Q1. コアカリの強制力について

A1. 診療のガイドラインのようなものとご理解いただきたい。法的な強制力はないが、各大学のカリキュラムの3分の2のスタンダードという認識である。平成28年度の改訂時からCBTの出題基準が反映されており、結果として守らざるを得ない部分もある。守らないとペナルティーがつくわけではない。あくまで目的はアウトカム基盤型教育なので、その精神を汲んでいればよい。上から押し付けているものではなく、全ての大学が自ら作り自ら守るという認識である。

Q2. コアカリは地域のニーズを拾っているのか

A2. コアカリを改訂した際にはパブリックコメント募集(意見公募手続き)を行っている。令和4年度改訂版では2022年の7月~8月の1か月間。何百件という意見が集まり議論を経て修正した項目もあり、一部ではあるが地域のニーズを含めた一般市民の声は拾っていると認識している。

Q3. 各大学内への周知は誰がどのようにやるのか

A3. 大学内の担当者にお願いしたい。本事業は各大学と直接対話の機会を設けたり、FDのための資材や必要な情報を提供したりすることでそれを支援する。

Q4. コアカリの量が膨大である。今後どうなるのか

A4. 平成28年度改訂時のものよりスリム化を図ったが、まだ多いとのご指摘をいただいている。次回改訂のときの課題として対応していきたい。

Q5. 診療参加型臨床実習実施ガイドラインの例示や表はmodifyして使用してもよいのか

A5. 画一的な方法を押し付けるものではなく、各大学の状況や文脈に沿ってmodifyして使用してよい。

Q6. 各大学で新コアカリと授業・カリキュラムの整合表を作成して確認しているが、このマトリックス表が埋まればそれでよいのか

A6. 必ずしもそうではない。アウトカム基盤型教育を意識し、4層構造になった学修目標と照合の上、改善事項があれば無理のない範囲でご対応いただきたい。

Q7. コアカリの学修目標と、大学カリキュラムの学習内容とを突合させる際、第何層の内容と対応させるとよいのか。

A7. 特に指定はなく、各大学の状況によってどの層と対応させるかを選べばよい。可能であれば、第4層と突合させることで、より具体的な学習内容を計画することができる。

Q8. 総合大学の場合、(他学部と共通した)全学教育を実施するが、コアカリの学修目標との擦り合わせはいかに行うべきか。また、全学教育はコアカリの指定する全カリキュラムの3分の2に含めてもよいか。

A8. H28年度版より準備教育モデル・コア・カリキュラムが廃止になっているため、全学教育は医学教育モデル・コア・カリキュラムに含まれるという理解でよい。なお、医学教育モデル・コア・カリキュラムの内容を教育する全学教育科目の担当教員に対しては、医学教育モデル・コア・カリキュラムを周知することが必要である。

Q9. 参加型臨床実習ガイドラインp155に記載されている、1診療科あたりの配属期間について、連続3週以上もしくは4週以上を指定しているものがある。これは必須であるのか。同一診療科のなかで部門をローテートしたり、指導医をローテートすることは可能か。

A9. 診療参加型臨床実習の学修効果を最大限引き出すには、診療科の基本的業務に慣れ、臨床実践を任せられる状況で実習を行うことが望ましい。そのためには、診療科内で多部門をローテートしたり、指導医をローテートするよりは、同一部門/診療チームの中での業務に慣れてもらい、臨床業務の一部を任せられる機会を多く持った方がよいと思われる。

Q10. アクティブラーニングの考えに沿えば、コアカリの学修目標を全て授業で扱うのではなく、自学自習で学ぶべきものがあってよいかと思う。その点は今後のコアカリに明記されるか。

A10. 該当する学修目標の到達を確認するための学修者評価が適切に行われるのであれば、授業で扱わずに自学自習で学ばせてもよい。なお自学自習はあくまで「一つの」学修法であり、それが適切かどうかは各大学の状況によって異なるため、コアカリの中で明記する予定はない。

Q11. コアカリに基づいた医学部教育は、全体的に臨床医育成を重視している。コアカリに立脚した統合カリキュラムの中での基礎医学教育の在り方を教えてほしい。

A11. 他の生命科学や人文社会科学とは異なり、医学という学問体系においては、臨床が大きな基盤となっている。よって、臨床的な課題を解決することを目的に、基礎医学や社会医学を学ぶという立ち位置が一つ考えられる。その考えに沿えば、統合カリキュラムにおいて、臨床現場の設定で課題を示し、その課題解決方法を学ぶ形で基礎医学と社会医学を学ぶカリキュラムを開発することは一案となる。

Q12. 診療参加型臨床実習ガイドラインp155で、いくつかの診療科では連続3週間以上の実習と期間が示されている。一方、JACMEでは〔主要な診療科〕では原則として1診療科あたり連続4週間以上の確保が推奨されている。コアカリと認証評価の間では摺り合わせが行われているのか。

A12. コアカリ改訂版の作成プロセスにおいては、定期的にJACMEとの意見交換が行われてきた。その結果、2023年4月3日公開の『医学教育分野別評価基準日本版Ver2.35』で、領域2.5の注釈は、「診療参加型臨床実習を効果的に行うために、すべての主要な診療科では、1診療科あたり連続して3週間以上、そのうち少なくとも1診療科では4週間以上を確保することが推奨される」に更新された。

Q13. PS-02などで出てくる「基本的事項」の基本とは何なのか。教員によっても解釈が異なるため、コアカリに具体的に明記してほしい。

A13. 次回改訂の際の検討課題とさせていただく。

Q14. 新旧のカリキュラムが混在すると混乱するため、現在の在校生のカリキュラムについても来年度からの新入生に合わせてカリキュラムを一部変更を予定しているがそれでよいか。CBTやOSCEで抜けてしまっているものもあるがそれで学生が不利益を被ることはないか。

A14. カリキュラムは新入生から変更することが原則である。よって現在の在校生の共用試験については、旧カリ(OSCEの場合はCATOが公表する最新の学修・評価項目)をご参照いただきたい。なおCATOによる全国説明会等で情報提供があると思われる。

Q15. 2025年から、「大学入学共通テスト」などで「情報」の科目が加わり、2025年度以降の入学者は、入学前に情報にIT領域をある程度履修し能力を獲得している可能性がある。コアカリのIT領域に関して、この流れに合わせて2025年度からのカリキュラム導入という発想は可能か。

A15. 教育に関連する様々な制度の変更時期の足並みを全てそろえることは現実として難しい。コアカリの内容をカリキュラムへと反映させる時期もあくまでも推奨であり、各教育機関の準備状況に合わせて進めていただければよい。

Q16. コアカリは「GEを実践するのに地域に出て行く」というポリシーなのか。そうなると大学での実習の意味とはどうなるのか。これについて方向性を説明して欲しい。

A16. 大学病院の実習では学べないGEの視点や資質を学ぶために、地域医療機関での実習を活用していただきたい。大学病院の実習では、大学病院でしか学べない症例や手術、検査等を学ぶ機会を提供することが役割となる。

Q17. GEで導入された行動経済学について、入門的な部分も担当するとなると、ミクロ経済学の基礎を理解する必要がある。単純に「行動経済学」と書かれているが、例えば「ダイエットがなかなか始まらないのは何故か」など、どのレベルで対応したらよいか悩んでいる。

A17. 行動科学や行動経済学に関しては、コアカリ記載されている学修目標の解釈に沿って、可能なレベルから教育を展開することが推奨される。必要であれば該当分野を専門とする教員を雇用することも検討してほしい。

Q18. 診療参加臨床実習実施ガイドラインp167の「当面の間は、院内掲示のみをもって同意とするのではなく、例えば入院患者・・・さらに侵襲的な行為を行う際には個別同意を取得するなども検討するべきとされている」は、臨床実習生(医学)の法的位置づけと社会の受け入れの変化に沿って、次回改訂を待たずに更新されることなどで、同意取得の煩雑さを理由とした診療参加の阻害を解消できる可能性はあるか。

A18. コアカリの記載の改変は、次回改訂時の際の検討事項となる。同意取得の取扱等について更新された場合は、関連省庁の通知文等の情報を教育機関がフォローできるよう、周知をしていく。

Q19. 新コアカリでは学修すべき疾患は約630であるが医師国家試験の出題範囲は約1500もある。両者の整合性や解釈、国家試験の出題範囲の変更の有無について知りたい。

A19. 今回のコアカリ改訂にあたっても、国家試験出題基準との整合性については、ある程度確認を行った。医師国家試験の出題基準については、医師国家試験出題基準改定部会等より説明があると思われるため、それをお待ちいただきたい。

Q20. 診療参加型実習ガイドライン(p195)において「内科、外科、精神科、総合診療科、産婦人科及び小児科を含む診療科では、原則として1診療科あたり連続3週間以上(ただし・・・中略・・・することが重要)、救急科では原則3週間以上の配属期間の中で指導にあたる医師から継続的な評価を受ける必要がある。」という記載がある。救急科だけ「連続」3週間となっておらず、継続的な評価さえ行われれば3週間を分割して実施することにして良いか。

A20. ご理解のとおりである。2023年4月3日公開の『医学教育分野別評価基準日本版Ver2.35』の領域2.5の注釈に「診療参加型臨床実習を効果的に行うために、すべての主要な診療科では、1診療科あたり連続して3週間以上、そのうち少なくとも1診療科では4週間以上を確保することが推奨される」と記載があり、主要な診療科での連続した実習が推奨されているが、コアカリ改訂版の作成プロセスにおけるJACMEとの意見交換等の中で、救急科については、診療体制が様々であることから、連続した実習であることを必ずしも求めないとされた。

Q21. 科目名について、コアカリ初版(2001年)の目次に記載された科目名が現在もそのまま本学の基礎医学等の科目名となっているものもある。他大学ではどの程度コアカリに準じて対応しているのか。

A21. 各大学での科目名は、各大学の教育カリキュラムの全体像および当該科目の学修目標や内容を踏まえて決定されるものであり、必ずコアカリで使用される科目名に準拠する必要はない。ただし、コアカリは4~6年毎の定期的な改訂の中で、その間の各学問分野や医学教育の変化や動向にも配慮しながら見直しが行われており、各大学で教育カリキュラムを改訂する際に参考にしていただきたい。なお、科目名に関する全国的な調査等につては今後の課題とさせていただきたい。

Q22. 臨床実習の実施期間が限られる中で、実習ローテートをしない診療科があってもいいのか。

A22. 「診療参加型臨床実習実施ガイドライン」のⅣ方略『臨書実習を行う診療科等』(p195-196)では、基本診療科として日本専門医機構の基本領域専門医とも整合させた19の診療科を提示している。また、学修目標の「患者ケアのための診療技能(CS)」では、基本診療科で主訴からの臨床推論の組み立て、疾患の病態や疫学の理解を示している。したがって、臨床実習では基本診療科での実習は実施していただくことが望ましい。一方で、基本診療科の他である歯科口腔外科や中央診療部門等での実習は、各大学での判断に委ねられる。